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竜巻

更新日:

先日、中国湖北省・長江で400人以上の乗客を乗せた
旅客船が転覆した。

旅客船の転覆、沈没事故といえば、
韓国で起きたセウォル号の事故が記憶に新しいが、
今回の事故は、海で起きたセウォル号の事故と違い
淡水域である川で起こっている点が、大きな相違点である。
また、セウォル号が天候的には極めて穏やかな
日中に起こったのに対し、
今回の事故は天候が悪い状況下での、夜の事故であった。
どちらの事故も、数百人単位の死者を出したが、
今回の事故は、救助活動が困難な荒天かつ夜中であったため、
犠牲者の数を増やしてしまった、という面がある。

さらに今回の事故で、気になることが報道された。
「竜巻」が発生し、
これによって旅客船が転覆したというものだ。
最初、この報道を聞いた時、
「?」という気分になった。
自分の持っているイメージでは、
「竜巻」というのは、日中に発生するものだったからだ。
日本などは、比較的「竜巻」の発生の少ない国なので、
人家などに被害を及ぼすような「竜巻」が発生すると、
かならず全国ニュースで報道される。
つまり、毎日ニュース番組を見ていれば、
年間、数回は「竜巻」被害のニュースを聞くのだが、
その全ては日中に起こっているものであった。
少なくとも、夜に「竜巻」が発生したというニュースは、
自分が記憶している限りでは、1度も聞いたことがない。
アメリカなどでは頻繁に大型の「竜巻」が発生し、
それが甚大な被害を巻き起こし、
そのニュースが日本でも報道されることがあるが、
そういう海外の「竜巻」報道でさえ、
すべて日中のものであった。
そういう意味で、今回の事故の直接的なきっかけとなった、
夜の「竜巻」というのは、自分の知る限りでは、
全く初めての事象であった。

「竜巻」は、積乱雲の下で、地上から雲へと細長く延びる、
高速な渦巻き状の上昇気流である。
先に書いた通り、日本でもたまにニュースになるが、
国内での発生件数は、年間20件程度である。
この数字についても、
あくまで平均20件程度ということであり、
年ごとの「竜巻」発生件数に関しては、相当のバラツキがある。
世界に目を移してみると、
アメリカでの発生件数が群を抜いて多く、
なんと年間1000件もの「竜巻」の発生が観測されている。
一説では、世界で発生する竜巻のうち、
実に8割がアメリカで発生しているといわれている。
そうなると、これから逆算すれば、
世界で1年間に発生している「竜巻」の数は
1250件前後ということになり、
日本では世界で発生する「竜巻」のうち、
1.6%ほどが発生しているという計算になる。
なぜ、これほどまでに
アメリカで「竜巻」が発生するのかということについては、
まったくわかっていないが、
アメリカで発生する「竜巻」は強力なものが多く、
かつ連続で発生しやすいというのは、
まぎれもない事実なのである。

発生する「竜巻」のサイズは、
平均すると直径数十mという規模のものが多いが、
大規模なものでは直径数百mから、千mにも及ぶ。
だが、日本で発生する「竜巻」では、
そこまで大型のものはない。
多くの「竜巻」は発生後に、
上空の積乱雲とともに移動していくが、
その移動速度は様々で、
最速のものでは時速100㎞ものスピードになることもある。
「竜巻」の中心部では猛烈な風が吹いており、
ときには、鉄筋コンクリートの建造物を崩壊させ、
大型の自動車などを、空中へと巻き上げることもある。
地震や台風などに比べると、被害面積こそ小さいものの、
被害の内容自体は、甚大であることが多い。
先に書いた通り、世界の「竜巻」の
8割が発生しているアメリカでは、
年間50人程の死者を出している。

日本では、長らく「竜巻」に対する警報等が、
整備されていなかったが、
1990年代以降、「竜巻」による被害が連続したため、
2008年より、気象庁の防災気象情報の中に
「竜巻注意情報」が加えられた。
また2010年からは、
「竜巻」等の突風の発生確率を詳細に予測し、
警戒を呼びかける「竜巻発生確度ナウキャスト」の発表が
開始された。
これは「竜巻」の発生を10㎞格子単位で、
10分おき、60分先までの予測を行なうもので、
発生確度は「1」と「2」の2段階に分けられている。
発生確度が「2」になった場合、
その地方には「竜巻注意情報」が発表される。
この発生確度の的中率は、
「1」「2」ともに5〜10%となっている。
え?そんなに低いの?と思ってしまいそうだが、
「竜巻」自体、まだまだ解明されていないことが多い現象なので、
それほどの高確率な予測は、不可能なのだろう。
とはいえ、5〜10%の確率というのは、
完全に無視してしまうには大きすぎる数字である。
竜巻発生確度が「2」となって、
「竜巻注意情報」が発表されたのなら、
それから1時間ほどは、「竜巻」の発生を警戒しておくべきだろう。
(1時間、というのは「竜巻注意情報」の有効時間である。
 これが延長されたり、新しく発表されない限りは、
 1時間経てば危険は無くなったと考えてもよい)

とはいえ、日本に住んでいる限りは、
「竜巻」に遭遇する確率は、かなり低い。
データによると、発生確率にはやや偏りがあるものの
ほぼ、日本全国で「竜巻」は発生している。
つまり「〜に住んでいるから自分は安全」とは
言い切れないというわけだ。
発生時間はやはり、日中が多い。
それも正午から日没にかけての時間帯が多く、
今回の転覆事故のような、夜の「竜巻」というのは珍しい。
(珍しいというだけで、決して無いわけではない)
季節も夏〜秋にかけてが多い。
これは恐らく「竜巻」の発生に関わってくる積乱雲が
この時期によく発生するからであろう。
つまり統計的には「夏の午後」が危ないということになる。
よく、山に登る人間は「夏の午後」は雷の危険が高いからと、
早めに行動を切り上げることが多いが、
こちらもその原因となっているのは、積乱雲の発達である。
そういう意味では、
「雷」や「ゲリラ豪雨」と同じタイミングで
「竜巻」も発生する確率が高くなっていると考えていい。
これらを警戒する際には、
一緒に「竜巻注意情報」がでていないか
気にかけておくようにしよう。

ただ、マジメな話、いざ「竜巻」を警戒するといっても、
一体何をすれば良いのか、戸惑ってしまうこともあるだろう。
強いものになると、
家や車でさえ吹き飛ばしてしまう「竜巻」に
有効な対策などあるのだろうか?
家の外に、鉢植えや自転車などを置いている場合は、
これを屋内に移すというのも、被害を小さくする1つの手だが、
「竜巻注意情報」が出てから、
それをするために屋外に出るのでは、全くの本末転倒だし、
予め家の中に入れておくというのも、さすがに限度がある。

アメリカなどでは、あまりに「竜巻」の被害が多いため、
各家庭に避難所となる地下室が作られているが、
日本では、そんなことをしている人もいないだろう。
「竜巻」という、日本では珍しい天災をどう防ぐか?

まず、それを考えてみるのが、
日本における「竜巻」対策の第1歩である。

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