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食べ物

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前回、身近なところでよく見かけるのに、食べない魚ということで、

ボラについて書いてみた。

そういう魚は、ボラだけではない。

今回取り上げる、「鯉」もまた、身近だが食べない魚である。

鯉はボラ以上に、身近な魚だ。

ボラを見ることができるのは、海か河口付近に住んでいる人だけだが、

鯉の場合は、近くに水場があれば、おおよそ見ることができる。

食欲はわかないかもしれないが、ペットショップに入れば、

錦鯉を扱っているところも多いし、また学校などに池があれば、

そこに鯉が放してあることもある。

川でも、それこそ河口付近の汽水域から、かなり上流まで、広く生息している。

川だけではなく、池や湖、沼など、こんな小さな池に?と驚くようなところにも、

生息している。

おまけに鯉もボラと同様、汚染に強い。

かなり汚いドブ川にも、平気で生息している。

ボラと鯉しかいない川というのは、汚染ランクではかなり最低の部類だろう。

もちろん、鯉もボラも住まない環境というのは、言語道断である。

鯉。

コイ目コイ科に属する、淡水魚だ。

鮒に似ているが、頭や目が体に対して小さく、体つきも細長い。

口に4本のヒゲがあり、これが鯉と鮒を見分ける最大のポイントだ。

中央アジア原産と言われていたが、第三紀の地層から、

鯉の化石が出ていることもあり、もともと日本にもいたようだ。

アジアからヨーロッパ、北米、オーストラリアと、世界中に分布している。

先に書いた通り、汚染に非常に強く、かなりひどい状況でも生きていける。

鯉が住んでいるのを、「水がきれいな証し」とする自治体もあるが、

これは逆で、鯉がいるということは、かなり水質が悪い可能性がある。

実はその生命力から、国際自然保護連合では鯉を、

世界の侵略的外来種ワースト100の中に入れている。

・ある程度のサイズになってしまうと、天敵がいなくなる点

・環境汚染に強く、他の生物が生きていけない環境でも生きていける点

・雑食で、他の水生生物をかなり圧迫する点

以上の3つが、その理由だ。

ちょびひげで、平和そうな顔をしているが、あれでなかなか侮れない魚なのだ。

鯉は日本における食用魚として、長らく王座を保ってきた。

古代から、祝いの宴や神撰に供される代表魚であり、

朝廷でも、正月や祝いの席で供されることが多かった。

「徒然草」にも

「鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものなれば、やん事なき魚なり」

と書かれている。

冷蔵、冷凍技術の無かった時代、海の魚は内陸部では手に入りにくかった。

手に入ったとしても塩漬けか干物程度で、生の魚が手に入ることはまず無かった。

そんな時代、淡水魚であった鯉は、まさにどこでも手に入る魚だった。

鯉の旬は冬ということになっている。

寒鯉がもっとも美味であり、夏場は味が落ちるとされている。

鯉料理には様々なものがあり、江戸時代初期に書かれた「料理物語」では、

刺身、なます、汁物、浜焼き、すし、こごり、小鳥焼き、煎鯉などが、

紹介されている。

江戸後期になると、刺身よりも洗いが好まれるようになった。

醤油ではなく、酢味噌につけて食べるのが一般的だったようである。

鯉の筒切り入りのみそ汁、いわゆる鯉こくも人気が高かった。

この洗いと鯉こくは、現在でも信州の旅館などで供されている。

鯉こくは、出産後の母乳の出をよくするといわれている。

さて、いざ鯉を食べようとすれば、これは大変である。

まず料理店で食べようとすると、鯉を扱っている店がわからない。

試しに地元のタウンページを調べてみたが、鯉料理店はもとより、

川魚料理の店も存在していなかった。

インターネットで調べてみると、県内にいくつか、

それこそ手のひらで数えられる程度の、鯉料理店があった。

数としては、極めて少ない。

そうなってくると、頼りになるのはネット通販だ。

調べてみたところ、調理前の鯉の値段は、

100gあたり80~180円ほどのものが多かった。

実際には、1kgからの販売ということになっている。

それくらいのサイズの鯉を販売している、ということらしい。

値段としては、高価というほどでもない。

スーパーに行けば、この値段帯の魚や肉は、むしろ大衆的だ。

置いてあれば、一度くらいは買って試してみてもいい価格だ。

商品の形態としては、筒切りになっているものが多い。

これは鯉こくに調理することを、意識してのことらしい。

はっきりいって、見た目は結構生々しい。

刺身や洗い用のものは、普通に三枚におろしてある。

これは薄いピンク色の魚肉で、それほどの違和感は感じない。

鯉を初めて食べる人の場合、こちらの方が向いているかもしれない。

鯉は、長らく日本の魚の王者でありつづけた。

ところが一旦、その座を鯛にゆずってからは、

急激にそのシェアを減らしていった。

そして現在では、ごくマニアックな一部の人間だけが、

食べる魚になってしまった。

いずれ鯉は、ただ鑑賞されるだけの魚に、なってしまうのかもしれない。

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