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ナマズ

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先日、こんなニュースがあった。

「ウナギ味のナマズ、近大が研究」

ようは、ナマズにちょっと工夫したエサを与え、育てたら、
ウナギに近い味になった、という話である。
この研究をしたのが、「近大マグロ」などでも知られる
近畿大学で、マグロの完全養殖に次ぐ、
日本の「食」への貢献になる。
最近、急激に数を減らして来ているウナギに代わって、
完全養殖できる代替品として、期待されており、
実際に食べてみたひとの話では、
「匂いも見た目もウナギそっくり」
「いわれなければ、ウナギだと思うかも知れない」
とのことなので、近い将来、
土用の丑の日には「ナマズ」を食べる、
ということになるかも知れない。

我々は普段、ナマズを目にすることが無い。
スーパーの鮮魚コーナーに並んでいることも無いし、
ペットショップの水槽の中にもいない。
和風庭園の池の中にも泳いでいないし、
そこら辺の川を覗き込んでみても、
ナマズの姿を確認できることは少ない。
(ないわけではない)
川や池に釣りに出かければ、釣れないこともないのだが、
ナマズを狙って釣っている人は、まずいない。
大方、夜釣りで鯉やウナギを狙っていて、
外道としてかかってくる、というのが精々だろう。
日中に、ルアーでブラックバスなどを狙っていると、
たまにナマズがかかってくることもある。
ブラックバスの場合、40㎝を越えるものが釣れることなど
まずないが、ナマズの場合は60㎝位の大きさになるので、
ライトタックルで釣っていた場合には、
取り込みに、大変苦労させられることになる。
問題なのは、それだけ苦労して釣り上げても、
それが「ナマズ」である限り、たいして嬉しくないことだ。
釣り仲間に、どれだけ大物を釣り上げたといっても、
それが「ナマズ」だとわかると、「ふ〜ん」ですまされてしまう。

ナマズは、ナマズ目ナマズ科に属する、
硬骨魚類の一種である。
日本には、もっともメジャーな「マナマズ」の他、
1mを超えるサイズにまで育つ「ビワコオオナマズ」と、
岩礁地帯に棲む「イワトコナマズ」の
3種類のナマズが生息している。
このうち、「マナマズ」は日本のみならず、
東アジア全域に生息しているが、
「ビワコオオナマズ」と「イワトコナマズ」は、
日本にのみ生息している、日本の固有種である。
日本でナマズといえば、
一般的にはこの「マナマズ」をさしている。
近大が「ウナギ味」に育て上げたのも、この「マナマズ」だ。
日本では、北海道と沖縄を除く、ほぼ全国に分布している。
日本在来種の中では珍しい、大型の肉食魚で、
感覚器であるヒゲを利用してエサを探し、
ドジョウやタナゴなどの小魚類、エビなどの甲殻類、
昆虫やカエルなどの小動物を補食する。
日本の淡水域の生態系においては、
もっとも上に属するものの1つである。

古代より、食用魚として食べられており、
縄文時代の貝塚からも、ナマズの骨格が出土している。
どうも古い時代には、西日本にしか生息していなかったらしく、
一定以上の古い出土例は、滋賀県より西部に集中している。
江戸時代以降の遺跡では、
愛知県や東京からもナマズの骨格が出土しており、
時代とともに東へ、東へと、人の手によって移植されたらしい。
少なくとも、人の手によって生息区域を広げられている以上、
食用魚として、重要な位置にあったのは間違いない。

「ナマズ」といえば「地震」といわれるほど、
日本ではこの両者が結び付けられてきた。
これはナマズが、
「地震を予兆して暴れる」とされていたからである。
また、地面の下には巨大なナマズがおり、
この巨大ナマズが地震を引き起こしている、ともいわれて来た。
ナマズと地震の関係については、
「日本書紀」でも触れられており、
飛鳥・奈良時代から、両者は関係があると思われていたらしい。
もちろん、これにはそれなりの根拠がある。
ナマズには上あごと下あごに、
それぞれ2本ずつのヒゲが生えているのだが、
この下あごの2本のヒゲは、常に地面に触れていて、
これで地中の震動を察知するのである。
なぜ、そんなものを察知しようとするのか?
実は、地震を起こすとさえ思われているナマズだが、
ナマズ本人は非常に震動に弱い。
ナマズを輸送する際に震動を与えてしまうと、
全滅してしまうことがあるくらいに、震動に弱い。
怪獣図鑑風にいえば「弱点は地震」と書かれるほどに、
震動に弱いのである。
だからこそナマズは、常にヒゲを地面に触れさせておき、
苦手な震動がくるのを警戒しているのである。
そんなナマズが、地震など引き起こすわけがない。
とんでもない濡れ衣である。
先にも、ナマズは元々、西日本のみに生息しており、
人の手によって東へ、東へと繁殖していった、と書いたが、
これだけ震動に弱いナマズを、
他所の池や川に運ぶのは、決して楽なことではなかっただろう。
タライや桶に入れて、揺らさないように気をつけながら、
慎重に運んだに違いない。
あんなふてぶてしい顔をしていながら、
実に繊細な魚なのである。

今回のニュースでは、
ウナギの代わりに蒲焼きにされたナマズだが、
その調理法は、意外に多彩である。
蒲焼きの他、刺身、洗い、天ぷら、バター焼き、南蛮漬け、
鍋、雑炊、煮物、塩焼きなど様々である。
様々であるが、いかんせん、食べる機会がない。
先に書いた通り、スーパーの鮮魚コーナーで
売っているものでもないし、
ナマズ料理の店というのは、タウンページで探してみても
ほとんど見つからない。
そうなってくると、いざ、ナマズを食べたいということになると、
ネット通販で探して飼うか、自分で釣ってくるしかない。

いずれ、近大の研究が進み、
ナマズがウナギの代用品として定着するころになると、
きっとスーパーなどでも、ナマズが販売されるようになるだろう。
ウナギの代替品としてのナマズではなく、
ウナギとは違う、美味しい食材として、店頭に並ぶ可能性も高い。

意外に数年後くらいには、
我々の食卓の上に、ナマズが潜り込んでいるかも知れない。

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