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なんばん

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なんばんというのは、はっきりしない言葉だ。

漢字で書くと「南蛮」ということになり、歴史の授業を思い出す。

国語辞典で意味を引いてみると、

1・南方の野蛮人。

2・昔、華南・マレー・南洋諸島をさした語。

3・ポルトガルやイスパニアのこと。

4・南方から渡来したものに添える語。

と、ある。

大体が、現代人の持っているイメージと、一致しているのではないだろうか?

もともとこの言葉は、中国から入ってきた言葉で、

1と2の意味は、日本から見た南方ではなく、

中国から見た南方の地方のことを、「南蛮」と称している。

3と4については、日本独特の使い方のようだ。

室町時代、日本にポルトガルやスペインの船がやってきて、

当時の西欧の文化を持ち込んだ際、それに「南蛮」の語をあてた。

現代人ならば、ヨーロッパが「南」に位置しないことを知っているが、

当時の日本人には、その地理的な知識は無く、

ただ中国が南蛮と呼ぶ地方から、船に乗ってやってくるという意味で、

彼らを「南蛮人」と呼んだようだ。

やがて江戸時代になり、日本は鎖国政策をとり、

海外の事情については、極端に疎い状況になってしまった。

そのため、西洋人=南蛮人という誤解は、一向に改善されることも無く、

幕末まで続くことになった。

実は上に書いた、国語辞典における「南蛮」の意味であるが、

わざと書かなかった5つ目が存在している。

1~4まではほぼ特定の地域や、そこに住む人々や、文化風俗をさしていたが、

この5つ目は、それらとは全く違う意味である。

今回、テーマとして取り上げた「なんばん」は、

その意味での「なんばん」である。

現在の日本にも、南蛮の名前を冠したものは多く存在している。

それらは、ごく当たり前に我々の生活の中に存在し、

我々も何の疑問も無く、それらの言葉を使っている。

ではそれらの言葉をあげてみよう。

カレー南蛮、鴨南蛮、小アジの南蛮漬け、チキン南蛮、鶏南蛮。

見事に食べ物ばかりだ。

じつはこれらの「南蛮」には、先に書いた5つ目の「なんばん」が使われている。

え、カレー南蛮の「南蛮」って、外国風とか、

そういう意味だったんじゃないの?と、思っている人が多いだろう。

それは間違いである。

その伝でいくと、「鴨南蛮」には、外国風の要素が無い。

鴨肉は南蛮よりもたらされたものでもないし、蕎麦もそうだ。

つまりこの鴨南蛮の中に含まれている「なにものか」こそ、

まさに「なんばん」であるということである。

ではここで、鴨南蛮を、おおざっぱに原料で分けてみよう。

・蕎麦

・だしつゆ

・鴨肉

・ねぎ

実にシンプルである。

この中で「南蛮」を意味しているものは、どれなのか?

とりあえず「鴨肉」は除外できる。

「鴨南蛮」である以上、鴨と「南蛮」は別物だ。

となると、残りは蕎麦、だしつゆ、ねぎである。

これがカレー南蛮になると、だしつゆがカレー汁になる。

これでだしつゆとカレー汁が、「南蛮」でないことが明らかになった。

残るは、蕎麦とねぎだ。

だが、南蛮漬けや、チキン南蛮を考えた時、そこに蕎麦は全く存在しない。

つまり蕎麦も「南蛮」ではない。

そう、最後に残ったねぎこそが「南蛮」そのものだったのだ。

先の国語辞典の話に戻る。

5つ目の項目を見ると、「ねぎ、唐辛子」をある。

唐辛子は、別名を「南蛮辛子」ともいう。

もともと唐辛子は、中南米原産であり、ヨーロッパ人によって世界に広げられた。

その経緯を思えば、「南蛮辛子」と呼ばれることにも、納得がいく。

問題はねぎである。

ねぎはアジア原産の植物であり、日本には奈良時代に伝来している。

そこには南蛮人の影など、全く見えない。

どうしてこれが、「南蛮」と呼ばれるようになったのか?

実はヨーロッパやアメリカでは、ネギはほとんど普及していない。

これはすでに、タマネギが広く普及していたからだといわれている。

アジアにやってきたヨーロッパ人たちは、使い慣れたタマネギが無いので、

代わりにねぎを使ったのではないだろうか?

それを見ていた、日本人は南蛮人が好むということで、

ねぎのことを「南蛮」と呼ぶようになったのではないだろうか。

ここで「南蛮」の名前を冠している、日本の料理を見ると、

確かにそのどれにも「唐辛子」か「ねぎ」が使われている。

鴨南蛮、鶏南蛮、カレー南蛮には、ねぎが、

チキン南蛮、小アジの南蛮漬けには、唐辛子が使われている。

最初にも書いたが、「なんばん」というのは、はっきりしない言葉だ。

長い年月を経ることによって、もともとの意味はほとんど失われてしまっている。

特に「ねぎ・唐辛子」を意味する「南蛮」など、

現代人はまず、知らないといってもいい。

恐らく、この先いつか完全に忘れ去られていくだろう。

とりあえず、それをちょっと遅らせる意味で、今回書いてみた。

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