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ケーキの思い出

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By: t-mizo

前回、書いたように、日本で「ケーキ」といえば、
ホール状のバースデーケーキか、
三角形をしたショートケーキを思い浮かべる人が多い。

もちろん、これ以外にも
「ケーキ」の名を冠したお菓子は多々あるし、
日本以外では「ケーキ」という名前が示す範囲は、
驚くほど多岐に渡っている。
これはちょっと雑なまとめ方になるが、
小麦粉などの穀物の粉を、
水・牛乳・油脂などを加えペースト状にして、
これを焼き上げたものを「ケーキ」としても、いいだろう。
こんなまとめ方をしてしまえば、
パンも、パイも、ビスケットも、シュークリーム(皮)も、
全て「ケーキ」ということになってしまうが、
概ね、そのような認識でも構わないと思う。
これにさらに、「ケーキ」たる条件を付け加えるとすれば、
何らかの方法を持って、生地に空気を含ませている点だろう。
パンはイースト菌など「酵母」の力で
生地に空気を含ませているし、
パイやビスケットはバターなど
「油脂」を生地に練り込むことによって、空気を含ませている。
パンケーキなどはベーキングパウダーなどをはじめとする
「膨張剤(ふくらし粉)」を使って空気を含ませているし、
スポンジケーキは「泡立てた卵白(メレンゲ)」を
生地に混ぜ入れることで、空気を含ませている。
ケーキではないが、日本では古来、
ジネンジョなど山芋類を小麦粉の生地に混ぜ入れることにより
空気を含ませ、ふわふわの饅頭の皮を作って来た。
パンやスポンジケーキ、パンケーキのふわふわ、
パイやビスケットのサクサクなど、
生地によっては大きく食感はことなってくるが、
どれも良く見てみれば、
焼き上がった生地の中に小さな穴が形成されている。
これが「ケーキ」たる、条件のひとつであると考えていいだろう。

「ケーキ」がいつごろから作られているかは、はっきりしない。
パンなどを「ケーキ」の一種とするならば、
それこそ有史以前より、
人間は「ケーキ」を食べて来たことになる。
一応、最古の「ケーキ」は、
スイスの新石器時代の遺跡から見つかっているが、
似たようなものは、各地に存在しているため、
これが発祥だ、ということについては断定することが出来ない。
日本で最初に「ケーキ」といえるものが作られたのは、
南蛮菓子の「カステラ」であろう。
(これ以前にも、山芋を生地に混ぜ込み、
 これを蒸すことによって、
 ふわふわの饅頭の皮を作ったりしていたが、
 「蒸して」いるという点を考慮すると、
 やはりこれを「ケーキ」に分類することは出来ないだろう)
日本で最初の卵料理ともいえる「カステラ」は、
卵を泡立てることにより、
あのふんわりとした食感を作り出している。
これこそ、我が国最初の「ケーキ」だろう。
江戸末期、明治時代初期ころには、
ビスケットやパンなどが作られ始めたが、
これらが作られたきっかけは、
戦争のための軍用食としての研究である。
現在のような、
スポンジケーキをホイップクリームで飾り付けた
「ケーキ」が作られ始めたのは、大正時代のことである。
誰がこれを作り始めたのか、
あるいは日本へ持ち込んだのかということについては、
諸説あってはっきりしない。
フランスやアメリカにも、
「ショートケーキ」という名前の菓子があるのだが、
こちらはビスケットのように硬く焼き上げられた生地に、
ホイップクリームやイチゴをトッピングしたもので、
日本の「それ」とは、かなりイメージが異なる。
このアメリカ式「ショートケーキ」の、
ビスケットをスポンジケーキに置き換えれば、
日本式「ショートケーキ」になるので、
当時の日本の洋菓子職人が、
独自にアレンジしたのかも知れない。
いずれにしても、このスポンジケーキに
ホイップクリームをトッピングしたスタイルの「ケーキ」は、
よほど日本人の嗜好にあっていたとみえて、
以降は「ケーキ」といえば、
スポンジケーキにホイップクリームというのが、
定番になったのである。

さて前回、我が家では1年に4回(子供の誕生日+クリスマス)、
ケーキを食べていたと書いたが、
実は一時期、妹が洋菓子作りに凝っていた期間があり、
そのときに、彼女はケーキ作りにも挑戦していた。
スポンジケーキの型を用意して、
この中に生地を流し込み、
オーブンレンジで焼き上げるのである。
うまくいけば、焼き上がったスポンジケーキに、
自分と弟が必死になって泡立てたホイップクリームを塗り、
(電動ミキサーの無かった当時、
 この面倒な作業は、
 自分と弟という「男手」に丸投げされていた)
誕生日でもクリスマスでもない「ケーキ」が
出来上がるはずであった。
しかし、そんなにうまく事は運ばず、
本来なら5〜6㎝ほど膨らむ筈だったスポンジケーキは、
全くといっていいほど膨らまず、
厚さ2〜3㎝ほどの、硬いナニかが出来上がった。
少なくともスポンジケーキの「スポンジ」らしさが、
まるで無いシロモノだった。
まあ、手作りケーキに失敗はつきものと、
予備の材料を使い、もう一度スポンジケーキを焼いたのだが、
オーブンから出てきたのは、
またしても厚さ2〜3㎝の硬いナニかであった。
つまり手元には厚さ2〜3㎝の硬いナニかが、2つある。
これを積み重ねれば厚さが5〜6㎝、
つまり、スポンジケーキがきちんと成功していた場合と
同じ厚さになるのである。
妹は、この硬いナニかの上にホイップクリームを塗り、
その上にさらに硬いナニかを積み重ねた。
その状態でさらにホイップクリームを塗りたくり、
イチゴをのせ、クリームをデコレーションして、
「ケーキ」が出来上がった。
もちろん、ホイップクリームで塗り込められているので、
見た目には全く普通の「ケーキ」である。

普通の「ケーキ」と同じように、
包丁を入れて切り分けようとするのだが、
柔らかいスポンジケーキと違い、すんなりと刃が通らない。
力を入れて押すと、間に挟んだホイップクリームが
横方向へと溢れ出して来た。
包丁をこまめに前後させ、
ゆっくりと「ケーキ」を切り下げていく。
パッと見には、完全にノコギリで切っているように見える。
かくして「ケーキ」は切り分けられ、
各々の前に供された。
そこに父親、母親、婆さんといった大人たちの姿は無い。
畜生。
フォークで「ケーキ」を小さくしようとするが、
包丁すら通らないソレは、フォークを受け付けない。
畜生。
仕様がなしに、ステーキ用のナイフを持って来て、
フォークを「ケーキ」に突き刺して、
ギリギリと切り分けていく。
ステーキよりも硬いじゃないか、この「ケーキ」。
畜生。
そのままホイップクリームのついた一片を
口の中に放り込む。
幸いにも味はごく普通で、みっちりとした固さだけが
やけに口の中に残る「ケーキ」であった。
普通に60度分ほどを食べたが、
それだけで随分と腹が膨れた。
冷静に考えてみれば、
実際には倍近い量の「ケーキ」を食べているのだ。
腹が膨れるのは当たり前だろう。
結局、翌日にはさらに60度分ほど、
この「ケーキ」を食べることになった。

この失敗に懲りたのか、
妹はその後、クッキーなどはたまに作るものの、
スポンジケーキは作ろうとはしなかった。
従って、あれだけ腹にたまる「ケーキ」には、
あのとき以来、一度も出会っていない。

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