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ブーメラン

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その昔、「秘密戦隊ゴレンジャー」という特撮番組があった。

いわゆる戦隊ものシリーズの第1作である。

秘密、と謳っているわりには、原色ド派手なコスチュームの戦隊だった。

この5人(正確には途中で黄色が1人、死亡しているので6人である)が、

それぞれに専用の武器を隠し持っている。

……顔に。

は?と思われた人も多いだろう。

懐とか、背中とか、武器を隠し持つには適した場所は他にもある。

しかし、この原色ド派手な秘密戦隊は、その武器を顔に隠し持っていた。

赤はムチ、青は弓矢、黄色は棒みたいなものだったと思う。

ピンクはカードのようなものだった記憶があるが、

むしろイヤリングに仕込んだ爆弾の方が、強く印象に残っている。

耳がついていないマスクなのに、何故かイヤリングがぶらさがっている。

不思議な装飾品であった。

で、緑である。

緑は顔からブーメランを取り出していた。

これを投げると、敵にダメージを与えて、くるくると回転しながら帰ってくる。

当時、小さかった自分には、これがかっこいい武器に思えた。

ムチや弓矢よりも、しゃれた武器に思えたのだ。

今回は、そんな「ブーメラン」について書いていく。

大方の飛び道具と呼ばれる武器は、相手に対してまっすぐに飛んでいく。

むろん、重力によって、射線が弧を描くことはあるが、

真上から見た場合、一直線に、敵に向かって飛んでいっている。

例外が、このブーメランだ。

大きく円軌道を描くようにして相手に飛んでいき、

そのまま円軌道を描くようにして、帰ってくる。

一体どういう発想によって、この奇妙な武器が生まれたのか?

ブーメランはもともとオーストラリアの先住民・アボリジニが、

狩猟の際に使っていた狩猟具であった。

同じようなものは、ヨーロッパなどでも確認されており、

世界中で使われていた道具のようだ。

岩に描かれた岩絵にその姿が確認されており、その歴史は紀元前まで遡る。

ヨーロッパでは狩猟具ではなく、武器として使われており、

兵士たちの標準装備であった。

恐らくは木製であるが故に、簡単に量産ができ、

かつ投擲以外でも棍棒としての使用ができるため、

汎用性が高かったためだろう。

弓矢の発達にともなって、各地で衰退していったが、

弓矢が発明されなかったオーストラリアでは、長く実用の猟具として

使用され続けていた。

またインド、アメリカでも使われていたという記録がある。

ブーメランは、戻ってくるもの、というイメージがあるが、

実は戻ってこないものも存在する。

これをカイリーと呼ぶ。

ブーメランに比べると大型で、運動エネルギーも大きい。

これは獲物にぶつけて、倒すことが目的のものであり、

カンガルーなどを気絶させることもある。

そういう意味では、このカイリーこそが、攻撃用ブーメランであるといえる。

では、手元に戻ってくる、いわゆる普通のブーメランは、

どのようにして使われていたのだろうか?

実は普通のブーメランは、鳥の群れの上をかすめるように飛ばし、

その群れを、手前方向に誘導するためのものであった。

当然だが、投げやすいように、またしっかりと戻ってくるように、

軽量に作られており、鳥にあたってもダメージはほとんど無い。

あくまでも獲物を追い立てるための、いわば猟犬代わりのものだった。

やがて、オーストラリアに白人たちが入植する。

そのとき彼らが目にしたものは、ブーメランとカイリーという猟具を使い

狩りをする先住民族・アボリジニたちの姿だった。

その中でも、奇妙な軌跡を描き、投擲者の元に戻ってくるブーメランの姿に、

白人たちは惹き付けられた。

それまでの彼らの文化の中にない、道具だったからだ。

かくしてブーメランは、入植者たちのイメージに強く刻み込まれ、

オーストラリアのシンボル的な存在となった。

19世紀以降、オーストラリアはブーメランを自らのシンボルとして使用した。

ホテルや、交通機関のシンボルとしてである。

手元を離れても、また同じ場所に帰ってくるブーメランは、

お客がまたここに帰ってくる、家に無事に帰ってくるという意味を持たされ、

そのシンボルとなった。

それだけではない。

爆撃機のシンボルにも使われた。

これもまた、飛行機が無事に空港に帰ってくるようにという、

一種の祈りのシンボルとして、機体に描かれた。

ブーメランは、その回帰性の軌跡により、

人々の願いを託されるようになったのだ。

やがてブーメランは、レジャー・スポーツとして注目される。

1965年ごろ、雑誌にて不思議な飛び方をすることが紹介され、

それ以降、アメリカを中心として広がっていった。

1969年にはアメリカ、1973年にはオーストラリアで

初めての競技会が行われた。

しかしこのころはまだ、競技性は低かった。

その後、オランダ、ドイツ、フランスなどにも愛好者が増え、

1988年にはオーストラリア建国200周年記念行事として、

7カ国が参加する世界大会が行われた。

日本では1982年に「日本ブーメランの会」が発足、

1986年に「日本ブーメラン協会」となった。

1994年と2006年には世界大会を主催している。

本来のブーメランは木でできており、動物を殺傷する能力こそないが

手元に戻ってくるのを捕え損ねると、怪我をしてしまう。

そういう危険をなくすために作られたのが、ソフトブーメランだ。

軟質な素材でできており、受け止めるのに失敗しても

怪我をするようなことはない。

現在では、屋外で楽しめるブーメランの他に、

室内で楽しめる小さなブーメランも販売されている。

もちろん、木製のブーメランも販売されているが、

こちらは一種の置物、アートとしての側面もあるようで、

凝った装飾がなされているものも多い。

当然、ブーメランであるからには、投げれば返ってくる。

しかしさすがに危険なので、もし木製のブーメランを投げる時は、

辺りに人や建築物のない、広い場所でやるようにしよう。

実は、紙やはがきで作るブーメランの制作方法が、

ブーメラン協会のホームページに載っている。

興味のある人は参考にして、自作してみてはどうだろうか。

紙飛行機よりもちょっと高度な、大人の紙工作だ。

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