世の中、ダイエットブームである。
老若男女問わずに、体重計を気にしている。
雑誌を開けば、ダイエット記事が並び、通販商品にはダイエット器具、
TVの情報番組で「あれ」がダイエットに効果があると放送されれば、
「あれ」はとたんに売り切れ、「これ」がダイエットに効果があるとされると
「これ」がとたんに売り切れる。
低カロリー、ノンカロリーは重宝され、高カロリーは敬遠される。
世の中の流れは、概ねこういうことになっている。
自分の身長は170cmである。
日本人の成人男性としては、ほぼ平均レベルと言っていい。
一番体重があった時は90kgほどあったし、
一番体重が落ちたときは(まあ現在のことだが)45kg程度である。
振り幅は45kgだ。
つまり現在の自分が鏡を見て、そこに映っている人間が
まるまる一人分いなくなったことになる。
お前は一体どこに行ったのか?
いやいや、それ以前にこれと同じものをもうひとつ、
自分は一体どこに抱え込んでいたのだろう?
いろいろと考えさせられてしまう。
痩せるといろいろな所が変わってくる。
普通の人間は、なかなか自分の身体が半分なくなる程の体重変化を
体験することはないだろうから、
そういう意味では自分はかなり貴重な経験をしていることになる。
自分の経験でいうと、
コカコーラは、ノーマルを選ぶようになる。
というより、ゼロカロリーを謳ったものを選ばなくなる。
今の世の中全体が持っている、高カロリーを敬遠する気持ちがなくなる。
今でこそ、低カロリー、ノンカロリーが喜ばれ、高カロリーが敬遠されているが
そもそも普通に考えれば、食事の目的が活動するためのエネルギーを
摂取するための行為でなのだから、食品としては高カロリーなものこそが
優秀であり、正しいということになる。
恐ろしいことだが、一度太っていた後遺症というのは
精神的な部分に残っている。
痩せ過ぎなくらいに痩せていても、「太っちゃうな~」などと考えて
ノンカロリー、低カロリーに手を伸ばす。
小腹がすいていても、「太るというしな~」と夜食のインスタントラーメンを
やめておく。
でもあるとき、ふと気がつくのだ。
「いや、ちょっと太らなきゃだめだろ!」と。
そこが太っていた後遺症を、乗り越えた瞬間である。