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ナンバ歩き

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小学校のころ、運動会の練習などで、行進をさせられた。

これは競技でもなんでもなく、ただの行進なのだが

結構、指導は厳しかった。

列が乱れていないか、リズムが狂っていないか、

歩幅は合っているか等々、やたらうるさく指導された。

今、考えてみれば、この行進というのは一種の指標で、

これがきっちりできているというのは、生徒たちの統制がとれているという

「証し」だったのだろう。

こんなもの、好きな子供がいるはずがない。

競技性は皆無だし、やっていて面白いものでもない。

そのくせ厳しいことを言われる。

こんなもの、好きこのんでやる奴なんか、いるわけがない、と思っていた。

学校を卒業して、行進というものから、ずいぶんと縁遠い生活になった。

しかし大人になってテレビを見ていると、

この行進を好きこのんでやっている人間たちが、いたのである。

この行進、「集団行動」という種目で、競技になっていた。

日本体育大学に通うスポーツマンたちが、一糸乱れぬ「集団行動」を披露する。

見ている分には面白いし、エンターテイメント性もある。

これをやりたいと、志願する人もいるらしい。

だがこれを見て、小学校や中学校で真似をしようという教師が出てくれば、

それは生徒たちにとっては、甚だ迷惑な話だろう。

あれは、やる気のある体育大学の学生が、厳しい練習の末にできたものであって、

一般の子供たちに、簡単にできるものでもないだろう。

それを強制されてやった所で、イヤな思い出が増えるだけだろう。

話がそれた。

この行進で、一番、まわりから笑われたのは、手足が同時に出る歩き方だった。

これを教師に指摘された子供は、あわててなおしていた。

なるほど、確かにかなり不自然な歩き方だ。

しかし後に、かつての日本人はそのようにして、歩いていたという話を聞いた。

そう、それが今回のタイトル「ナンバ歩き」である。

街角に立って、道行く人々を眺めていても、そんな変な歩き方をしている人間は

1人も見当たらない。

誰もが、左手を前に出すときは右足を、

右手を前に出すときは左足を、前に出して歩いている。

本当に昔の日本人は、そんな奇妙な歩き方をしていたのだろうか?

その根拠になっているのは、江戸時代の「絵」である。

大名行列などを描いた絵では、同じ手足を同時に出しているようにも見える。

しかし、これは全く動きのない絵を根拠にしているので、

その信憑性はかなり低い。

武士は、刀を腰にさして歩いていたが、この時、普通の歩き方だと

刀が着物に絡んで歩けない、という話がある。

……どうだろうか?

時代劇などを見ていると、役者は刀を腰にさして歩いているが、

そんな特殊な歩き方をしているようには見えないし、

また、刀が着物に絡んでいるようにも見えない。

それだけではなく、一般の町民も「ナンバ歩き」をしていたという。

山などで運搬業を営む者や、行商人など、重量物を担いで歩く人々は、

体の軸を安定させるために、「ナンバ歩き」をしていたというのだ。

しかしこれも考えてみればおかしい。

それならば日本だけでなく、世界中で「ナンバ歩き」が行なわれているはずだ。

しかし、そんな話は聞いたことがない。

これらの説では、明治時代、徴兵制が導入された際に、

軍隊の教練で西洋式の歩き方を教え込んだために、

日本従来の「ナンバ歩き」が廃れたのだという。

これも苦しい。

それならば、徴兵されなかった人々の間には「ナンバ歩き」は残るはずであり、

軍隊教育など全く関係なかった女性は、この影響を受けたはずがない。

そう考えると、この説にも無理がある。

やはり最初から、「ナンバ歩き」は一般的ではなかったのだろう。

第一、歩き方を強制的に変えたのであれば、一般の書物の中や、

軍隊の記録の中に、それについての言及がないのはおかしい。

やはり「ナンバ歩き」は江戸時代においても、

特殊な歩き方だったと考えるのが、自然なようである。

では、「ナンバ歩き」が特殊な歩き方であったとして、

この歩き方はどこで使われていたものなのか?

歌舞伎の動きの「六法」や、日本舞踊の足運びは、

「ナンバ歩き」に近いものになっている。

また、古武術などで使われている足運びも、「ナンバ歩き」であることが多い。

一説によれば、飛脚は「ナンバ」で走ることによって、1日に数十km、

あるいは100km以上も走ることができたという。

一見、すごい数字のように感じる

だが、現在のマラソンでは、42kmを3時間ほどで走る。

数字だけで見れば、別に「ナンバ」でなくとも、

一日のうちに100kmを走ることはできそうだ。

もちろん体格的な問題や、道の舗装状態、履物の違いなどの問題もあるので、

同じようにに引き比べて、論じるのは無理があるのだが。

最近ではスポーツ選手の中にも「ナンバ」の動きを取り入れている人がいる。

ただその効果のほどについては、しっかりとしたものが出ていない。

まだまだ研究の待たれる、テーマのようだ。

……さて「ナンバ歩き」について、歴史的な観点から検証してみた。

ずいぶんと、こき下ろしてしまった気がする。

だが、昔の日本人が皆「ナンバ歩き」をしていたとするのは、

やはり無理があるようだ。

が、ここでひとつ、ちょっとした告白をしないといけない。

自分の歩き方が、実はこの「ナンバ歩き」なのだ。

しかも付け焼き刃的なものではなく、体に染み付いてしまっている。

なぜ、こんなことになっているのか?

そして「ナンバ歩き」には、本当に何らかの効果があるのか?

それは次回、ナンバ歩き~実践編で書いていく。

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