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植物 食べ物

ニラ

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前回、「水仙」について書いた中で、
うちの庭に「ニラ」も自生していることを書いた。

この2つが共に生えているというのは、
一般的には「かなり危険なこと」と、
思われるかもしれない。
ニラと水仙は、その葉の形がよく似ており、
ともすれば、間違ってしまうこともあるからだ。
前回も書いた通り、水仙はその全草に毒があり、
10gも食べれば致死量に至るという、
なかなかえげつない有毒植物である。
この2つが共生しているということは、
全く同じ色と形をしたキノコと毒キノコが
同じ場所に生えているようなものである。

特に「水仙」の場合、ニラと間違えるわけだから、
結構な量を食べることになる。
そうなると、致死量の10gなど、
あっという間にオーバーしてしまう。
事実、市販のニラにしてみても、
一束で100gほどの量がある。
これと同じ量の水仙を食べたとすれば、
致死量の10倍以上の毒物を摂取したことになる。

もちろん、自分は間違えたことなどない。
水仙には、ニラのような強い臭いが無いこともあるが、
何より、うちに自生しているニラと水仙では、
その大きさも、生えてくる時期も、
全く違っているからである。

うちに生えているニラは、
大きくても20㎝ほどにしか育たず、
市販のニラに比べても、驚くほど小さく細い。
きちんとしたニラ農家が、水や肥料を与え、
手塩にかけて育てているのと違い、
我が家のニラはどこからか種がやってきて、
勝手に生えてきたものである。
ただの雑草である、ともいえる。
(実際、食べずに雑草として処理してしまうことが
 ほとんどなのである)
一方の水仙は、最大のものでは50㎝ほどに成長し、
葉も厚く、市販のニラより数倍は大きい。
ニラが春先から秋ごろまでの、
比較的暖かい時期に生えるのに比べ、
水仙は冬から春先にかけて生えてくる。
これだけの違いがあれば、間違える方が無理である。

ニラは、ユリ科ネギ属に属する多年生草本である。
古くから、インド・中国で栽培されており、
日本に伝わってきたのも、相当に早い時期であったらしい。
「古事記」には「加美良(かみら)」、
「万葉集」では「久々美良(くくみら)」、
「正倉院文書」には「彌良(みら)」と記されている。
平安時代末期に、この「みら」が変じて「にら」となった。
日本での栽培は9~10世紀ごろから始まっており、
北海道や東北の寒い地方で、
身体が温まり、精力のつく野菜として重宝がられていた。
丈夫で作りやすく、刈り取った後の株から
新しい葉が生えてくるので、
1年のうちに数回の収穫が可能であったため、
戦前までは、家庭菜園での栽培が主で、
八百屋の店頭に並ぶことは少なかった。
臭いが強かったことと、
刈り取った後、傷むのが早いために、
流通が確立するまでは、
扱いにくかったのではないか、とも考えられる。
中国西部が原産地と考えられており、
東アジア一帯に広く分布している。
現在でもヨーロッパでは
ほとんど栽培されていない。

ニラといえば、あの独特の強い臭いを思い浮かべるが、
あれはネギやタマネギ、ニンニクと同じ、
硫化アリル(アリシン)という物質である。
ビタミンB1の吸収を高めたり、
肉や魚の生臭みをやわらげる効果がある。
栄養価が高く、スタミナのつく食材として利用されており、
βカロテンやビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの他、
カルシウム、リン、鉄などの
ミネラル分も豊富に含まれている。
βカロテンやビタミンEは、油と相性がいいため、
レバーなどとの炒め物に向いている。
(中華料理のレバニラなどは、
 栄養的な意味でも、理にかなっているのだ)
強烈な臭いを発しているが、
胃腸には良く、整腸作用がある。
ニラ本体でなく、煮汁を飲んでも
ある程度の効果を得ることが出来る。

栽培は極めて簡単、というよりは
しっかり定植さえさせてしまえば
後は放置しておいても、勝手に成長してくれる。
先に書いた通り、一度収穫しても
しばらくすると再び葉が生えてくるので、
1年のうちに何度も収穫できる。
収穫をしていると、あの独特の臭いが指先に付着する。
洗ってもなかなか落ちないので、
これを避けたい場合には、
直接手で収穫することをせず、
ハサミなどの道具を使ってニラを切るか、
手袋をつけて作業しよう。

もし、何かの間違いで畑以外の場所に生えてきた場合、
これはなかなか厄介な雑草となる。
いくら刈り取っても、次から次へと生えてくる。
さらに素手で除草作業をしていると、
あの臭いが指先にしみ込む。
根っこから抜き取ろうとしても、
ほとんどの場合、茎の部分でちぎれてしまい
根が地面に残ることになる。
除草剤でも使わない限り、根絶は難しい。

ニラは、古くから食べられている割りには、
日本料理で使われることが、少ない。
せいぜい、みそ汁の具にする程度である。
禅宗では「五葷(ごくん)」、
つまり食べてはいけないとされる
5種類の野菜のひとつに数えられ、
「精進料理」の材料に使われることもなかった。
現在でも、日本料理にはほとんど使われることはないが、
中華料理では、様々な料理に使われている。
炒め物などに、ほんのりとニラの風味が効いていると、
グッと中華っぽく仕上げることが出来る。
そういう意味では、ニンニクなどと並んで、
非常に重宝される野菜である。

もう少し暖かくなれば、
うちの庭に、ニラがニョキニョキと生えてくる。
ミョウガや柿と同じく、
これも我が家の「実り」のひとつである。

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