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タケノコ

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昨今、竹林というのは荒れ放題である。

我がたつの市でも、その90%以上は
荒れるに任せた状態になってしまっている。
竹林の中は、多くの枯れた竹や、
病気かかってしまった竹、
倒れてしまった竹が入り乱れ、
悲惨な状態になっている。
竹なんて、生えてくるのは春先の一時だけなのだから、
その整備は簡単そうに思えるのだが、
実際にきれいに整備されている竹林というのは、
驚くほどに少ないものである。

日本の田舎では、
竹林というのは全く珍しくない。
山裾や、川縁、林道沿いなど、
至る所に竹が生えているからだ。
自転車で市内を走っていても、
広いものから、こじんまりしたものまで、
様々な竹林が、あちらこちらに点在している。
そしてそのあちらこちらの竹林は、
ほぼ全てが荒れ果てているのである。

ところが面白いことに、
たつの市から山をひとつ越え、姫路市に入ると、
突如として竹林はきれいに整備された、美林になる。
枯れて倒れている竹など一本もなく、
竹と竹の間隔も充分にとられ、
雑木や雑草も生えていない。
その落差は笑えるほどである。

これはたつの市民と姫路市民の性格の違い……、
などではない。
タネを明かせば、たつの市から山ひとつ隔てた
姫路市の太市は、その名を知られた
「タケノコ」の産地なのである。
そのため、竹林は普通以上にきっちりと整備され、
素晴らしい景観を作り出しているのである。
山ひとつを隔て、竹林の美しさが天と地ほども変わるのは、
住んでいる当の住民からしても、
不思議な気分になってしまう。

さて、太市の名産「タケノコ」だが、
これが作られるようになったのは、
嘉永年間(1848~1853年)に、
親竹となる「孟宗竹」を移入してからである。
まさに江戸末期といっていい時期である。
現在では、「タケノコ」=「孟宗竹」といってもいいくらい、
孟宗竹のタケノコが主流になっているが、
この「孟宗竹」が日本に持ち込まれたのは、
江戸時代になってからである。
では、それまで日本にタケノコがなかったのかというと、
そんなことはなく、古くは「古事記」の中にも、
「タケノコ」の名前を見ることが出来る。
このころ、食べられていたのは、
「マダケ」のタケノコだと考えられており、
こちらの方は、最初から日本に
自生していたのではないかと考えられている。

名前の由来は、そのまま「竹の子」である。
竹はイネ科の植物であるが、
稲のように毎年、種子をつけることはなく、
地下茎から若芽を出すことによって、
新しい竹が生えてくる。
実際は、地下茎にて
一帯の竹は全て繋がっていることが多く、
竹林ひとつが、ひとつの「竹」という風に
考えることも出来る。
そう考えた場合、
「竹」の寿命は60~120年ほどもあり、
この中で1度開花し結実する。
その後は、ひとつの竹林が
まるまる枯死してしまうといわれている。

タケノコは非常に成長が早く、
かつては、わずか10日で竹になるといわれていた。
そのため、タケノコを表す漢字「筍」は、
10日を意味する「旬」の字から、きているとされる。
実際に筍の成長は驚異的な早さで、
1日に1m以上、成長することがある。
単純に計算すれば、1時間に4cm以上
成長しているということになる。
タケノコを割ってみると、
すでに節は全て出来上がっていて、
その後、いくら成長したとしても節の数は増えない。
面白いことに、ひとつの竹林に生えてくる
タケノコの節の数は、全て同一である。
この全ての節の間が一斉に伸びるため、
驚異的な成長速度が生まれるのだ。
タケノコの皮には、この節の成長を助ける働きがあり、
若竹からこの皮を剥いでしまうと、
皮を剥がれた「節」の成長は止まってしまう。
ただ、全てのタケノコが、
竹に生長するかということになると、
実はそんなこともなく、7割ほどのタケノコは
途中で成長が止まり、枯れてしまう。
増えすぎて過密状態になり、共倒れしないための
一種の自除作用だろうか?

栄養成分としては、タンパク質が豊富で
ビタミンB1、B2、ミネラルなどを含んでいる。
また食物繊維も豊富である。
旨味成分として、グルタミン酸やアスパラギン酸などの
各種アミノ酸を含んでおり、
茹でタケノコに見られる白い粒も、
チロシンという旨味成分である。
タケノコは「食べれば精がつく」ともいわれるが、
一方で食べ過ぎた場合、
吹き出物やアレルギーに似た症状が起こることもある。
食物繊維が多く、カロリーが低いため、
ダイエットの一貫として食べるのも有効ではあるが、
食べ過ぎると上記のようなことも、起こりうる。
何事も、ほどほどがいいようだ。

最初に、市内のあちらこちらに竹林があると書いたが、
それは当然、あちらこちらでタケノコが生えている
ということでもある。
実際、竹林の側を自転車で走っていると、
いくつものタケノコが、生えてきている姿を目にする。
そのほとんどが、収穫されることもなく、
ただニョキニョキと伸びているだけなのだが、
果たして適当な大きさのタケノコを採って、
持って帰ってもいいものだろうか?

採る場所はいくらでもあるのだが、
後々、「タケノコ泥棒」などということになるのは、
避けたい所だ。

実際、竹林は手も入れられず、
荒れ放題になっているのだから、
適当にタケノコを採って、これを間引くのも、
竹林の手入れになるのではないかとも思うが。

こうして悩んでしまう所が、
ツクシとの、大きな違いだろう。

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